社会福祉法人、医療法人の会計監査を中心とする監査法人

医療法人の会計監査

 医療法人の会計監査

医療法人制度改革が進められる中、平成27年9月に「医療法の一部を改正する法律」が成立し、医療法人は医業経営において更なる効率性と透明性を求められています。

従来、医療法人の会計は、施設単位の会計基準である病院会計準則などに準拠していましたが、一定規模以上の医療法人に対して、平成29年4月2日以降開始する事業年度から医療法人会計基準」が適用されるとともに、公認会計士・監査法人による監査(会計監査)を受けることが義務付けられました(改正医療法第51条及び第70条の14)

会計監査を受けるための体制づくり(法人内部の管理体制や医療法人会計基準の適用状況の見直し)には、ある程度の準備期間が必要です。
会計監査のみならず、事前の体制づくりのお手伝いも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

目次

1.医療法人の会計監査の目的

2.医療法人の会計監査の概要
(1)監査対象となる一定規模以上の医療法人等とは?
(2)会計監査はいつから始まりますか?
(3)会計監査はどのように実施されますか
(4)会計監査を受け入れる体制準備には何が必要ですか?

1.医療法人の会計監査の目的

会計監査の目的は、監査を受ける医療法人を取り巻く多様な利害関係者(地域社会、利用者、職員、国、地方公共団体、金融機関等)に対し、公認会計士が独立した第三者として監査を受ける法人の財務報告の信頼性を担保することにあります。

2.医療法人の会計監査の概要

(1)監査対象となる一定規模以上の医療法人等とは?

一定規模以上の医療法人等には、公認会計士・監査法人による監査を受けることが義務付けられています。(改正医療法第51条及び第70条の14)
監査対象となる法人は以下のとおりです。

①医療法人
  • 医療法人のうち、最終会計年度に係る負債額の合計が50億円以上、又は収益額の合計が70億円以上である法人。
②社会医療法人
  • 社会医療法人のうち、最終会計年度に係る負債額の合計が20億円以上、又は収益額の合計が10億円以上である法人。
  • 社会医療法人のうち、社会医療法人債を発行している法人。
③地域医療連携推進法人
  • 全ての地域医療連携推進法人が対象。

 

(2)会計監査はいつから始まりますか?

医療法人の会計監査の開始時期は、平成29年4月2日以降開始の会計年度です。3月末を決算期とする法人の場合は、平成30年4月1日より始まる会計年度が、会計監査の初年度となります。
ただし、会計監査を受ける前年度に、監査を受ける体制が整っているかの調査(予備調査)を受ける必要がありますので、その調査後の体制整備の改善期間をある程度、見込んでおくことが大切です。

なお、3月決算法人を例とすると、予備調査から初年度の会計監査の完了までのスケジュールは以下のようになります。

※1 予備調査
会計監査人候補者は予備調査を実施し、会計処理、内部統制(適正に決算報告を作成するための体制・仕組み)、経営管理体制等の課題を抽出し、解決策を提案します。

※2 監査受入体制整備
予備調査によって報告された会計処理、内部統制、経営管理体制等の課題を解決し、受入体制の整備を進めていただきます。

※3 期中監査
期末監査(5-6月)の手続きが過度に集中しないよう、また、会計・監査上の課題を早期に発見し解決するため、期中の取引等を随時検証します。
なお、監査導入初年度は、貸借対照表の期首残高(平成30年4月1日の監査スタート時点の残高)も監査人は検証する必要があります。

※4 実査・立会・確認
実査・立会・確認は、期末日時点における財産の状況を確かめるための監査上、重要な手続きです。手続きの詳細は下記の(3)をご覧ください。

 

(3)会計監査はどのように実施されますか?

会計監査は、まず監査人が監査計画を立案するところから始まります。
人員や時間に制約があることから、すべての仕訳や証憑を検証するのではなく、法人の特性や経営環境、内部統制の整備・運用状況、取引の実態等を勘案して、財務諸表のどの部分に重要な誤りや不正が発生しやすかをまず見極め、その上で、リスクが高い部分に対して、重点的に監査を実施するという監査計画を立案します。

そして、立案された監査計画に従って、次のような監査手続を期中から期末にかけて実施していきます。

①経営者及び監事とのコミュニケーション 監査を効果的・効率的に実施するため、経営者及び監事と、有効な双方向のコミュニケーションを図ります。
②実査 手許現金、定期預金詔書、受取手形等の現物を監査人自らが確認することにより、資産の実在性等を確かめます。
③立会 法人が実施する棚卸資産の実地棚卸等の現場に監査人が立会い、内部統制の状況や資産の実在性等を確かめます。
④確認 勘定残高や取引の実在性・網羅性等につき、取引先等の第三者に対して文書により問合せ、回答を監査人が直接入手します。
⑤質問 経営者、職員又は外部の関係者に対し、取引の内容等について問い合わせを行います。
⑥証憑突合 会計データとそれを裏付ける証憑書類の照合によって、証憑書類に示された取引が正しく記録されていることを確かめます。

監査人は、上記のような監査手続を実施し、財務諸表のそれぞれの勘定科目に誤りがないと確信できるところまでの心証が得られると、勘定科目間や財務諸表間の相互関連性、整合性を検討し、最終段階として、監査意見を形成するための合理的な根拠が全体として得られたかを確認します。
そして、監査人は、形成した監査意見を監査報告書に記載し、法人に提出することで、一会計年度の会計監査は終了となります。

(4)会計監査を受け入れる体制準備には何が必要ですか?

会計監査を導入するにあたり、法人は自ら適切に財務諸表を作成する体制を事前に整備する必要があります。また、会計監査を円滑に実施するためには、会計処理の根拠資料の整備や一定水準以上の内部統制の存在も重要です。
会計監査をいざ受けようとする際に、会計監査の受け入れ体制が整っていなければ、監査に相当な時間を要したり、監査の導入自体が行えなくなる可能性もあります。
具体的には以下の体制準備を行っていただければと思います。

①業務マニュアルの整備、業務手順の共通化
  • 業務の内容が、特定の担当者に依存しておらず、業務マニュアル等で見える化、共通化されていることで、内部統制が有効に機能しているかどうかの検証が可能となります。
②会計処理の根拠資料の整理
  • 根拠資料(領収書、請求書、その他の計算資料)が、どの会計処理に対応しているかを明確にしておくことで、円滑な監査が実施可能となります。よって、伝票番号で会計伝票と根拠資料を紐付けしておくことが大事です。
  • 過去からの慣習などで会計処理の根拠資料の作成や取り交わしを行わず、口頭のみでのやり取りとなっている取引がある場合は、本来あるべき契約書等の準備が必要となります。
③勘定残高の内訳内容の整理
  • 貸借対照表の勘定科目(仮払金、前受金等)の内訳の中に、内容が十分に把握されていない残高がある場合には、調査を行い、内容の把握、整理を行いましょう。
④固定資産台帳や在庫の受け払い記録の作成
  • 固定資産台帳の記載内容と固定資産現物に差異(登録漏れ、除却漏れ、償却誤り等)が発生していないかどうか定期的にチェックする仕組みを構築しましょう。
  • 在庫について期末に実地棚卸を行っていたとしても、期中の受け払い記録を作成しておくことは大事です。期中の受け払い記録がない場合、在庫の横流しや棚卸のカウントミスが発生しても、その発見が困難となります。
⑤医療法人会計基準の適用状況の確認
  • 未収入金や賞与引当金、未払金等を月末に計上せず、収益費用を、入金時や支払い時といった現金主義で計上している場合には、決算時に発生主義に直す必要がありますので、その情報を効率よく取得する仕組みが必要となります。
  • 棚卸資産、固定資産、有価証券、引当金、税効果会計等は、医療法人会計基準に従って評価を行っているかの確認を行っておきましょう。
  • 「重要な会計方針等の記載及び貸借対照表等に関する注記」や附属明細表の記載事項について、漏れなく正確な記載のための情報収集の仕組みを検討しておくことが大事です。

 

会計監査を受けるための体制づくり(法人内部の管理体制や医療法人会計基準の適用状況の見直し)には、ある程度の準備期間が必要です。
会計監査のみならず、事前の体制づくりのお手伝いも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

PAGETOP
Copyright © CTS監査法人 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.