平成28年8月2日に第18回社会保障審議会福祉部会が開催され、「社会福祉充実残額」を明確化するために、社会福祉法人が保有する財産から控除すべき事業継続に必要な財産、すなわち控除対象財産の算定方法がより具体的に示されました。
控除対象財産は、①「社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等」②「固定資産の再取得に必要な財産」③「必要な運転資金」の3つの合計ですが、どのような資産をどの程度の範囲で含めてよいかが不明確でした。今回の福祉部会での素案で具体例が多く示されましたので、各法人において「社会福祉充実残額」を事前に試算することがある程度、容易になったかと思います。

(1)控除対象財産①「社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等」
=財産目録により特定した事業対象不動産等に係る貸借対照表価額の合計額

 控除対象となる財産  控除対象とはならない財産
 ○法人が実施する社会福祉事業等に直接又は間接的に供与されている財産であって、当該財産がなければ事業の実施に直ちに影響を及ぼしうるもの。    ○法人が実施する社会福祉事業及び公益事業等の実施に直ちに影響を及ぼさない財産。
  • 現に事業に活用している土地・建物・設備(障害者総合支援法に基づく就労支援事業に活用されている土地・建物・設備を含む。)
  • 職員の福利厚生のための土地・建物・設備等
  • サービス提供に必要な送迎車両
  • サービス提供に必要な介護機器
  • サービス提供に必要な生活機器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ等)
  • 事業に必要な事務機器(パソコン、プリンター等)
  • 災害時のための食料・物品の備蓄
  • 障害者総合支援法に基づく就労支援事業における工賃変動積立金
  • 使途が限定されている寄付金等(基本金に計上されないもの)
  • 国・自治体等の補助により造成され、使途が限定されている基金等 ・現預金、有価証券
  • 人件費積立金、修繕積立金等の積立資産(ただし、障害者総合支援法に基づく就労支援事業における工賃変動積立金を除く。)
  • 遊休不動産(断続的であっても、長期にわたって事業に継続して使用している不動産は除く。)
  • 美術品

(2)控除対象財産②「固定資産の再取得に必要な財産」
=【将来の建替に必要な費用】
(現在の建物に係る減価償却累計額×建設単価等上昇率)×一般的な自己資金比率(注1)
【建替までの間の大規模修繕に必要な費用】
+(現在の建物に係る減価償却累計額×一般的な大規模修繕費用割合20%(注2))-過去の修繕額
【設備・車両等の更新に必要な費用】
+減価償却の対象となる固定資産(10万円以上)に係る減価償却累計額の合計額

(3)控除対象財産③「必要な運転資金」
=年間事業活動支出の1か月分+事業未収入金相当額
(介護報酬等による施設については、事業未収金が2月分発生するため、実質的に計3月分が控除対象となる。)

(注1)控除対象財産算定時に用いる「一般的な自己資金比率」は、建設時の自己資金比率を元に算定されるが、上限(35%)と下限(15%)が設定される見込です。
(注2)各種係数については、現時点で仮置きであり、別途実施する調査研究事業の結果等を踏まえ最終的に決定されます。

社会福祉充実残額の算定や社会福祉充実計画の策定にあたり、お悩みがありましたら、CTS監査法人にお気軽にご相談下さい。