日本公認会計士協会は、平成31年3月19日付で非営利法人委員会実務指針第 38 号「公益法人会計基準に関する実務指針」の改正を行いました。
本改正は、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(企業会計基準第28号)」において、繰延税金資産の取扱いが改正されたこと及び内閣府公益認定等委員会「29年度報告」により、外貨建有価証券の会計処理に係る実務上の指針の明確化が必要となったことにより行われています。
また、本改正は、平成30年4月1日以後開始する事業年度から適用となり、繰延税金資産、繰延税金負債の計上区分や、外貨建有価証券の会計処理方法等に変更がありますので、公益法人会計基準に準拠している法人のうち、税効果会計を適用している法人や外貨建有価証券を保有している法人は、決算において注意が必要です。
外貨建有価証券の会計処理方法の新旧処理の違い
改正後の会計処理の要約 | 改正前の会計処理の要約 |
①満期保有目的の債券については、外国通貨による償却原価(又は取得原価)に決算時の為替相場による円換算額を付する(外貨建債券について償却原価法を適用する場合における償却額は、外国通貨による償却額を期中平均相場により円換算した額による。)。この場合に生じる換算差額は「経常増減の部」の為替差損益として処理する。 | ①満期保有目的の外貨建債券については、決算時の為替相場による円換算額を付する(外貨建債券について償却原価法を適用する場合における償却額は、外国通貨による償却額を期中平均相場により円換算した額による。)。 |
②満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(1年以内に満期が到来する債券等)及び投資有価証券のうち市場価格のあるものについては、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付する。この場合に生じる換算差額は「経常増減の部」の評価損益等として処理する。 | ②満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(1年以内に満期が到来する債券等)及び投資有価証券のうち市場価格のあるものについては、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付する。この場合に生じる換算差額は「経常増減の部」の評価損益等として処理する。 |
③満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(1年以内に満期が到来する債券等)及び投資有価証券のうち市場価格のないものについては、外国通貨による取得価額を決算時の為替相場により円換算した額を付する。この場合に生じる換算差額は「経常増減の部」の為替差損益として処理する。 | – |
④満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券のうち売買目的有価証券については、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付する。この場合に生じる換算差額は「経常増減の部」の有価証券運用損益として処理する。 | – |
⑤時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により帳簿価額の引下げが求められる場合には、外国通貨による時価又は実質価額に決算時の為替相場により円換算した額を付する。この場合に生じる換算差額は「経常外増減の部」の投資有価証券減損損失の科目により処理する。 | ③外貨建有価証券について時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合には、当該外貨建有価証券の時価又は実質価額は、外国通貨による時価又は実質価額を決算時の為替相場により円換算した額による。 |
– | ④決算時における換算によって生じた換算差額は、原則として、当期の為替差損益として処理することになっているが、公益法人が所有する外貨建有価証券に係る換算差額は為替差損益として別掲せず、評価損益に含めて処理することができる。 |