公益法人は、その公益目的事業を行うに当たり、公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならないこと(以下、「収支相償」という。)が、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」で定められています。

これは、公益法人が利益を内部に溜めずに、公益目的事業に当てるべき財源を最大限活用して、無償・格安でサービスを提供し、受益者を広げることが求められているためです。

収支相償を満たしているかどうかは、単年度の経常収益と経常費用の比較(公益目的事業の各事業単位と公益目的事業全体の2段階の比較)に基づいて判定を行うこととなりますが、単年度において経常収益-経常費用が「黒字」になってはならないということではなく、中長期的に損益が均衡することが確認されれば収支相償を満たすものとされています。

では、単年度において経常損益(評価損益等調整前当期経常増減額)が「黒字」であっても、中長期的に損益が均衡し、収支相償が満たされる場合の対応例としてどのようなものが考えられるでしょうか。

この点、「公益認定等ガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)及び「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)」(以下、「FAQ」という。)では以下のような各法人の対応例が示されていますので、収支相償を検討する際の参考にしていただければと思います。

【対応例】

  • 特定費用準備金資金の積立

例)将来の公益目的事業の拡大(新規事業の開始、既存事業の拡大)、数年周期で開催するイベント、記念事業等が当該積立の対象となります。ただし、将来の一般的な備えは対象とならず、対象が具体的であること(FAQに記載の要件を満たすこと)が必要です。実現の見込みが低い事業や、実施までに例えば10年の長期を超えるような事業は、積立対象として適当ではないとされています。

  • 資産取得資金の積立

例)公益目的に使用する建物の修繕積立金、減価償却引当資産等。対象が具体的であることが必要です。

  • 当期の公益目的保有財産の取得

例)公益目的に使用する什器備品等の取得。

なお、内閣府より平成30年06月27日付で「平成29年度公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」が公表されました。この中で、上記の特定費用準備資金の活用を促進する観点から、「特定費用準備資金の明確化措置」として、一定の要件を条件に、「将来的に収入の安定性が損なわれるおそれがあり、専ら法人の責に帰すことができない場合」に該当する場合についても特定費用準備資金の計上を認めることとするとされています。よって今年度中に関連する部分のガイドラインやFAQが改正されるかと思いますのでご留意下さい。